M&A
M&Aに関する当事務所の関与について
弊事務所が所在しております福島県郡山市においても、事業の再編とM&Aは増加しているように思います。とりわけ、経営者の高齢化に伴い、事業を売却したり、特定の事業に集中して広い地域で事業を拡大したりする需要もあり、M&Aはとても重要な手段となっています。
弊事務所におきまして、M&Aに関する業務は大きくわけますと2つあります。
①一つ目は売り主のアドバイザーとしての業務、②二つ目に買い主のアドバイザーとしての業務があります。
①の売主のアドバイザーの場合は、たとえば、買い主側の企業がデューデリジェンスを行うに際して、資料や説明事項等を整理したり、法的な観点からアドバイスをする、また、株式譲渡契約書作成の交渉や締結等の事務を行います。
特に長年継続されてきた企業の場合、株券が見当たらなかったり、現在の株主がわかっても、途中経過が不明だったりという問題があり得ます。この場合にきちんと資料を整理し、説明義務を果たさなければ、買手は取引をやめてしまうこともあり得ます。
そのような自体にならないよう売主の企業価値を正当なまま取引が実現できるようお手伝いするのが、売主のアドバイザーです。
②の買主のアドバイザーは、買収先の企業の法務デューデリジェンスがメインとなります。買収先の企業において、本来必要な書類や証拠等がすべてきちんと保管されているケースは必ずしも多くはありません。それでも、買収を決断される場合も多いものです。その場合にも、後々の様々な法的観点からのリスクは少なくできるに越したことはありません。
そのお手伝いをすることが買主側の法務アドバイザーとしての役割です。
もちろん、株式譲渡契約書の作成等も行います。
弊事務所におきましては、郡山、福島、いわき等をはじめとする東北地方全体におけるM&Aにおける売主・買主のアドバイザー業務、法務デューデリジェンス(法務DD)を行っております。
法務デューデリジェンス(法務DD)
1. デューデリジェンスとは
企業が事業承継やM&A(買収等)を行う場合において、買収をする企業がその買収される対象(被買収企業)である企業等の実態を調査することをいいます。
法務、財務、経営、人事等の面から調査をし、買収にあたっての問題点や価格面での問題等を洗い出し、問題点や改善点等を抽出、分析することです。
弁護士が行う法務部門のデューデリジェンスを法務DD、または法務デューデリと呼びます。
2. デューデリジェンスの目的
(1) 対象企業の法的問題点の把握
法務DDにおいては、M&Aにおけるとっての法的問題点の把握が重要な要素となります。法務DDが調査の対象とするのは、主に会社組織・契約・労務・許認可・コンプライアンス等についてです。
定款、取締役会、株主総会の適法性や取引先との契約書の内容に問題がないか(極端に不利な内容ではないか、今後の取引に支障はないか)等を調査します。もちろん、被買収先の取引先が多数に上る場合に、すべての契約書を検討する事は非現実的であるばかりでなく、必要性にも欠けます。そのような場合は、金額面等から一定の範囲の契約書に調査対象を限定します。
また、株式が有効に譲渡されてきたかどうか等も含めて、買収に法的な問題点がないかどうかを検討します。
資料等の調査や、被買収先の企業等に赴いて資料を調査したり、経営陣や従業員等にインタビューをしたりします。
弊事務所は、M&Aにおける法務DDを積極的に受任しております。
(2) 対象企業の企業価値の把握
被買収先の財務諸表等を調査、分析したり、被買収先の企業等に赴いて資料を調査したり、経営陣や従業員等にインタビューをするなどして、被買収先の経営実態を調査し、企業価値ないし株価の評価等を検討します。
対象企業の不動産の時価評価、棚卸資産の評価(不良在庫等)、不良売掛金、決算の適正さ、営業権の評価、簿外債務等が問題となることがあります。
担当は、公認会計士や税理士等の会計事務所が行う事となります.弊事務所が法務DDを依頼されている件につきましては、協力関係にある会計事務所をご紹介いたします。
(3) 対象企業の人事労務の実態の把握
M&Aにおいては、手続が完了するまで一部の人にしか、買収については情報が伝わっていないことも多いため、すべての経営陣や従業員から話を聞くことは難しいかもしれませんが、少数の人から話を聞くことで、書類からは見えない会社の実体や雰囲気等がわかることもあります。
人事労務については、退職金や未払い残業代等のトラブルが現にあるか、あるいは、そのトラブルの種が隠れていないか等も検討の対象となります。
就業規則や給与規定、退職金規程の内容を検討したり、タイムカード等から未払い残業代の発生可能性を探る等の計算も必要となります。企業の規模や業種により、弁護士や社会保険労務士が担当します。
買収する企業の就業規則や給与体系がどのようになっているかを、買収する前に検討しておくことで、その情報を買収後の自社と被買収先を統合する場合にどのように調整していくかを検討する場合にも有用な資料となります。
3 法務デューデリジェンスにおける調査対象資料等
調査の対象と範囲は、ケースバイケースにより変動いたします。
(1) 会社の概要
□商業登記簿謄本
□定款-原始~現在:会社の設立手続の有効性等
□会社案内、社歴書
□支店、営業所、工場等一覧
□社内組織図
□関連会社、子会社一覧
□株主総会議事録、取締役会議事録
□社内規定集
□M&A一覧-合併、会社分割、事業譲渡、株式譲渡、株式交換等
□増資、減資の一覧
□コンプライアンス体制
(2) 株主の確定
□株主名簿-設立時から現在迄
□株券の発行の有無
□譲渡制限、ストックオプション等一切の制限等一覧
□名義株の処理
(3) 従業員
□社員名簿-正社員、アルバイト・パート、契約社員、派遣社員
□就業規則、賃金規程、退職金規程等
□守秘義務契約書、誓約書
□雇用契約書
□労働組合の有無、状況
□賃金台帳
□タイムカード
(4) 主要取引先
□仕入先等一覧
□販売先等一覧
□瑕疵担保責任等
(5) 資産関係
□財産目録
□不動産登記簿謄本-抵当権等設定の有無・内容
□リース物件一覧
(6) 負債関係
□一般債権者一覧
□金融関係一覧-担保設定状況一覧
□公租公課一覧
□労働債権一覧
□連帯保証一覧
□PL、損害賠償債務-付保状況
□訴訟一覧
□隠れた債務
□デリバティブ
(7) 契約関係
□商取引基本契約書
□不動産賃貸借契約書-テナント、倉庫、駐車場等
□リース契約書
□保険契約約款
□その他-重要な契約書一切
(8) 知的財産
□特許、実用新案、商標、意匠
□著作権-ソフトウェアを含む
□職務発明規程
□ライセンス契約書
(9) 訴訟、紛争
□現在係争中、又は将来そのおそれのある一切の紛争
(10) 許認可事項
□業務上の許認可事項
□M&Aの場合の承継の可否
4 法務デューデリジェンスの進め方
(1) 事前準備
買主である会社や会計事務所、仲介組織等と打合せをしながら、調査範囲やどのような調査資料が必要かを検討し、被買収先の会社に請求します。
(2) 調査・検討
事前に被買収先から提供された資料については、事前に調査をし、さらに、経営者等に質問する事項を検討します。
資料の中には、現地に行かないと見ることができないものがあるのが通常です(機密性の問題と資料の量の問題があります)。そのような資料については、日程を調整して、現地において調査をし、経営陣等とインタビュー等をします。
現地の調査をしても不明な内容については、その後、担当者にQ&Aリストを送付し、回答してもらったり、追加でインタビュー等をすることにより必要な調査をしていきます。
(3) 報告
調査した結果は、「法務調査報告書」という形で報告書にまとめて提出します。必要に応じて、内容等の説明や買収後のお手伝いをさせていただくこともあります。